元DeNA北方悠誠、ダルビッシュとの出会いが導いた「160キロの奇跡」 独立リーグからドジャースへ

かつてDeNAベイスターズ第1期のドラフト1位として期待されながら、一軍で1球も投げられず戦力外となった北方悠誠。その後、独立リーグを転々としながらも、驚くべき逆転人生を歩んだ彼の物語は、まさに野球界の感動的なエピソードだ。
ダルビッシュからの“信じられない”連絡
2016年のオフ、北方のもとに突然、ベイスターズ時代の先輩・高森勇旗から電話があった。「ダルビッシュ有さんがお前と練習したいって言ってるよ」という言葉に、北方は耳を疑った。
「本当に本人ですか? 偽者じゃないですよね?」
実際に連絡を取ると、東京都内のジムでダルビッシュ有本人と対面。大谷翔平や藤浪晋太郎、田中将大らトップ選手たちが集うその場に、独立リーグ所属の自分がいることが不思議でならなかったという。
「なんで僕なんだろうというのは、今でもよくわかりません(笑)。でも、ダルビッシュさんが『これをやっておけばいい球を投げられるようになる』と言ってくれたトレーニングを信じて取り組みました」
ウェイトトレーニングを中心にした基礎的なアプローチだったが、体の使い方が劇的に変わった。肩だけで投げていたのが、体全体を使うフォームに進化。そして、彼が元々持っていた剛速球が再び戻ってきた。2019年には栃木ゴールデンブレーブスでキャリア最高の159キロを記録し、ついに球速160キロの大台を突破する。
運命を変えた160キロ
北方は当時、「160キロを出せば何か変わるかもしれない」という思いでトレーニングに打ち込んでいた。すると、その努力が実を結ぶ形で、ロサンゼルス・ドジャースが興味を示す。視察を受けた試合で160キロを計測したことで即座に契約が決まった。
「親、西岡剛さん、そしてダルビッシュさんに相談しました。みんなが『挑戦すべきだ』と言ってくれたんです」
アメリカではまずルーキーリーグに所属し、環境に慣れるための調整期間を経験。しかし、新型コロナウイルスの影響でマイナーリーグが中止となり、思うようにチャンスをつかめないままリリースされた。それでも、メジャーリーグの門を目前までたどり着けたことは、彼にとって大きな財産となった。
佐賀からメジャーリーガーを
現在、北方は地元・佐賀県に戻り、解体業に従事しながら中学生の指導を行っている。自身が果たせなかった夢を、次世代の子どもたちに託している。
「佐賀県からメジャーリーガーを出したい。それが今の僕の目標です」
独立リーグでの苦労や、ダルビッシュとの出会い、そしてアメリカでの挑戦。それら全てが北方の人生を大きく変えた。彼はこう語る。
「もう一度やり直せるなら、若いうちは諦めずに続けてほしい。少しでも未来を感じるなら、後悔しない選択をしてほしい」

